「問題ありません。
安全バーがロックされない場合でも運転は可能です。
ただし、(キリッ)
こちら(東京ドームシティ)の運転操作係が 必ずロックを確認しております。」
(括弧は筆者。)
「もぅ、危機意識は、もぅ、私ども十分持っているつもりですけれども、
やはり、事実、あのぉ、事故が起きてしまったということは、
まだまだ意識が足りないんだというふうに、これは、深く反省しております。」
PMBOKは、プロジェクトマネジメントに関して網羅性に優れている反面、総花的、汎用的であるが故に、項目ごとの詳細度や具体性に欠けています。
なので、このブログのサブタイトルのように何かしら、具体性を持たせながら学ぶことが必要になってくるのですが、
最近は、その教材になりえる事例に事欠きません。
特に品質マネジメントや、リスク・マネジメント。
冒頭の言葉は、先日死亡事故が起きた東京ドームシティ側の記者会見でのコメント。
一つ目が事故当日、記者からの質問に対する答え。
二つ目は、事故から二日経った社長のセリフ。
重大事故が起きたとき、直接の原因が現場の仕業にあったとしても、その根本原因が組織の体制や仕組みにあることは少なくありません。てか、ほぼ間違いありません。
とはいっても、社会や法律はどんな場合にでも100%の確実性を求めているわけではないですけどね。
航空会社とバス会社の安全管理のレベルには差があって当然でしょう。
要は常識的に(もちろん一般的にではなく、プロとして)当たり前のことをやっていたか、どうかです。
今回の事故も、その常識レベルから見た過失の大きさに応じて、東京ドームシティの責任が問われることになります。
過失が大きいければ、民事上の賠償だけではなく、刑事責任も問われるでしょう。
今回はどうでしょうか?
まだ事故の詳しいことは分かりませんが、私はその可能性大だと思います。
死亡という結果の重大性もさることながら、私が確信したのが上記の記者会見です。
発言の内容と時期が、まったく整合性がとれていません。
図らずも、品質、リスク、安全、こうした分野の素人(しろうと)であることを暴露してしまっています。
経営陣に、事業分野にあるべき品質(安全)管理のプロがいない・・。
こうした経営側の意識は、残念ながら、組織内のあらゆる仕組みや、働く人の行動様式に反映されてしまっているハズです。
【経営者責任 management responsibility】
PMBOKが品質を論じるにあたって指針としている「近代的品質マネジメント」の4つの特徴のうちの一つで、PMP試験の重要論点でもあります。
近代的といっても、ここ10年とか、20年とかの話ではなく、もっと、ずーと昔からある考え方です。
近代的品質マネジメントの4つの特徴とは、経営者責任に加えて、顧客満足、検査より予防、継続的改善。
経営者責任とは、言い換えれば、「品質はマネジメントの問題である」と捉えることです。
なにも、結果責任すべてを経営者個人が負うという意味ではありません。
しかし、まずこの経営者責任が機能しないことには、他の3つの特徴が実現できない、そういう特徴間の関係でもあります。
品質(安全)の確保は、現場任せでは無理があるわけです。
なぜか?
品質(安全)には、競合する制約、トレードオフの関係となる要因があるからです。
たとえば、品質とコスト、あるいは品質と生産性。
品質マネジメントにおいて、難しいのが定着フェーズです。
チェック作業をマニュアル化するのは簡単です。
それがスキップされないようにする、形式化しない魂のこもった作業にする、それも何年にも渡って変わることなく。
ここに大変な手間がかかるわけです。
フェーズと言いましたが、終わりがあるわけではないんです。
東京ドームシティで、アルバイターが担当施設の売上げに対して強く動機づけされていたとは考えにくいですが、
スピーディに客をさばくことが評価につながっていたということことはないでしょうか。
たとえ非公式であっても、設備の稼動率を上げたことを褒めたり、そのアルバイターを重宝がるムードを見せれば、アルバイターはその気になります。
品質(安全)は何も起きないことが当たり前で、評価もされない。
一方で生産性(売上)アップやコスト削減が評価につながるとすれば、何が起きるかは明らかです。
先ほど言った、品質と生産性がトレードオフであるというのは、ものごとを居所的に捉えてしまうからです。
長期的にみればコストメリットも有るし、全体として生産性も上がる。 少なくとも経営者はそう認識していないといけない。
全体観に立って、資源配分の優先順位付けを意思決定し、品質(安全)に向かって組織を動機づける。
これは経営者にしかできないことなのです。
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